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2020年秋、ソフィア・ファーム・コミュニティでの調剤講座に参加しました。
その時の写真はこちら
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ソフィア・ファーム・コミュニティでのバイオダイナミック調剤講座の後半に、ベンさんが、みんなでキャンプファイヤーを囲む機会をつくってくれた。

とんでもなく大きな、その辺の木を倒してそのままくべたような薪にゆっくりと火がうつり、いっときには暑いくらいにまで温まった。
火を囲んで飲んだり食べたり、おしゃべりをして楽しい時間を過ごし、やがて火が落ちてみんなが席を立ち帰りはじめた時、ベンさんが「シーっ」と周りをしずめて、耳をすますように合図をした。
笛の音のような、木が軋むような、甲高く尾をひく声が山の向こうから響いてくる。
「Deer!」
ベンさんが教えてくれる。
「オスの鹿が、ヘイガール!ってメスの鹿を呼んでいるんだ」
この声は岩手の自宅でも、夜になると響いてくるのをよく耳にしていた。
”キツネでもないし、なんだろう、鳥かな・・?”とあまり気にしていなかったけれど、そうか、鹿だったのか!
あの、流れ星が突然降ってくるような直線的で涼しい鳴き声の謎が、やっと解けた。
秋は鹿の発情期。オスはこの特徴的な鳴き声でメスを呼び、角を付き合わせて他のオスと縄張りを争うのだそうだ。

ケンカをしたのか?角が折れて血が滴っている。
R.シュタイナーの「農業講座」では、鹿についてこんな風に書かれている箇所がある。
鹿は、地球よりも宇宙により密接に関連しています。
R.シュタイナー「農業講座」森章吾=訳 p.78
(中略)
鹿の膀胱はほとんど宇宙の写しです。
”《地》に近い生命的なものを作用させる(p.79)” という牛とは反対に、鹿は宇宙と関連しているのだそうだ。
牛の角やひづめでは、”流れが強力に内に向いている(p.57)” その一方で、鹿の枝角では ”力を外に逃がすための一種のバルブとして流れを作る(p.57)” とのこと。
牛と鹿の鳴き声を比べても、それぞれの性質がそのまま現れているようだ。
低く地を這ってどこまでもとどろくような牛の声、天高く矢を射るような甲高い鹿の声。
鹿の美しさは、ある種の流れを外に送り出し、周囲世界に生き、神経や感覚に有機的に作用するあらゆるものを取り込み、周囲の世界としっかりとコミュニケーションしていることに由来します。敏感な鹿なのです。ある意味において、枝角を持つ動物全般で、神経過敏的なものをわずかに帯びていることがその目から見て取れます。
R.シュタイナー「農業講座」森章吾=訳 p.57
今年に入り、自宅の周りでニホンジカを見かけることがとても増えた。
この間、夕方の散歩から帰ってくるときに、日が沈みかけて薄暗くなった風景の中、棚田をかけあがっていく2頭のオス鹿のシルエットに出会った。
2頭とも、遠くからでもしっかり確認できる立派な枝角をたずさえ、力強く脚をしならせて、跳ね上がるように駆けていく姿に、しばらく我を忘れて陶然としてしまった。
陽が落ちると窓の外から、遠くでオスの鹿がメスを呼ぶ声が聞こえてくる。
秋の夜の冷たい空気をまとって、露の降りた田畑をかけていく鹿の姿を浮かべながら眠りにつく。


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