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「タヌキ学入門 かちかち山から3.11まで身近な野生動物の意外な素顔」

タヌキ学入門
かちかち山から3.11まで身近な野生動物の意外な素顔

高槻成紀 著 誠文堂新光社 2016

田舎道では、よくタヌキが車に轢かれて死んでいる。
ロードキル、と呼ぶそうだ。
とくに雨上がりに多い気がする。

車を運転していると、とつぜん目の前をタヌキが走り抜け、すんでのところで轢くのをまぬがれたのは1度や2度ではないし、
轢かれて死んだ後にまた轢かれてしまうのもいたたまれくて、直接触らないように道路の隅に引きずっていったこともあった。
けっこう重いものだった。あんなに近くで野生動物を(死体とはいえ)しげしげと見たことはない。

畑の作物、夏のトマトやトウモロコシなども、たまに野生動物に食べられる。
誰が食べているかわからないけれど、「タヌキか何かが食べたんだな」と思う。
「タヌキか何か」と一緒くたにするのも申し訳ないけれど、”そのへんにいて夜になると出てくる動物たち”の一種と思っている。

もっとも身近な野生動物と言えるのに、それでもタヌキのことをあまり知らない。

そもそもタヌキは 哺乳綱 食肉目 イヌ科 タヌキ属 に属する、犬の仲間なのだそうだ。
そして、タヌキと大きさの似ているその他の身近な野生動物も、みんなそれぞれ異なる科に属していた。
「タヌキか何か」とまとめてはいけなかった。

  • タヌキ   イヌ科 タヌキ属
  • ハクビシン ジャコウネコ科 ハクビシン属
  • アライグマ アライグマ科 アライグマ属
  • アナグマ  イタチ科 アナグマ属
  • イタチ   イタチ科イタチ属

タヌキの学名は ”Nyctereutes procyonoides” 、そのまま訳すと「アライグマに似た夜にものを探す動物」という意味だそう。
「アライグマに似た」って二番煎じみたいでちょっと失礼だなと思ったが、日本では慣用句や熟語になったり呑み屋の軒先に佇んでいたりと身近な存在のタヌキは実は、自然分布しているのは東アジアだけという、世界的にはけっこうめずらしい生き物だというからしょうがないのかもしれない。

隠れる場所が多く、主食である果物や小動物が豊富な森林、食べ物がある農地(農家は困るけれど)の側など、里山と呼ばれる地域に多く生息しているが、なんと東京23区のほとんどにもタヌキは生息しているらしい。
ビル街には住めないにしても、住宅地には公園や雑木林があるし、川のそばには緑地もある。
そういえば以前「鉄腕DASH」で、都会のタヌキの特集を見たことがあった。(新宿DASHで繰り広げられるタヌキの三角関係! お茶の間の食事時にタヌキの脱糞シーンを延々見守ることになるTOKIOと視聴者 #鉄腕DASH

里山が開発され、住む場所を失ったキツネやウサギなどの野生動物は減っていったのに、なぜタヌキはしぶとく残り、東京のような都市部でも生き延びているのか、著者の高槻さんは人間との共通性をあげている。
タヌキには、食べ物にしても生息地にしても、”これでなければいけない”というものがないのだそうだ。食生の幅がひろいので、環境の変化に柔軟に対応し生きて行くことができる。

実はこのことを最も推し進めたのはホモ・サピエンスというサルである。[中略] 特殊化しないことがその可能性を拡大した例といえるだろう。タヌキはその意味では我々ヒトと共通なものを持っているといえる。

「タヌキ学入門」pp.205-206 高槻成紀 著 誠文堂新光社 2016

この本の「タヌキのQ&A」というコーナーに、”タヌキに出会ったらどうすればいいですか?”という問いがあった。
高槻さんは、”私はこの質問自体に人の身勝手と一方的な態度を感じます。” と前置きし、質問に”タヌキに凶暴性はないのか”、という意図がふくまれていると仮定して回答をされている。

体重60kg、身長170cmほどの雑食性の霊長類が、体重5kg、胴長50cmほどの食肉目を捕まえようとしたとき、小さい食肉目が恐怖のあまり、そして自衛のために牙をむかないことがありえるでしょうか。それは凶暴とはいいません。客観的にみれば、10倍以上も体重がありながら、小さい動物を追い詰める霊長類のほうがよほど凶暴というべきでしょう。

「タヌキ学入門」p.176 高槻成紀

ほんとうだ。

参考サイト

タヌキ – Wikipedia
【画像あり】アライグマ・タヌキ・ハクビシンの違いと簡単な見分け方
新宿DASH ~タヌキの新宿ラブストーリー~
プロ・ナチュラリスト佐々木洋の動物たちの東京物語 エピソード1「首都にすむ世界的珍獣」~タヌキ

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