「タネが危ない」野口勲 / 日本経済新聞出版社 2011年
固定種を中心に扱う種屋さんの三代目として生まれた野口さんは、小学生のころに手塚漫画と出会い、その後大学を中退して虫プロに入社、手塚治虫の編集者となった。
そして30歳で「意味のあるタネ屋」をやろうと家業を継がれ、固定種野菜の復活に邁進されていく。
また野口さんは、2007年に起こったミツバチ消失症候群(CCD)の原因が、人間に操作され雄性不稔となった植物の蜜や花粉を餌に育ったミツバチが無精子症になっているからではないか、と洞察されている。
そして、「〔中略〕ミツバチで起こったことは、同じ動物である人間にもきっと起こるだろう」とも。
タネを支配することで農業を、ひいては世界の食糧を支配しようとする人たちがいる。
わたしたちは知らず知らずのうちに、その姿が見えないほど大きなものに支配されているのかもしれない。
自由でいたければまずは真実を知ること、自分の目で見て、自分の頭で考えること、真贋を感じ分けるセンサーを鍛えることが必要ではないかと思う。
そのうえで軽やかに機嫌よく生きていきたいと思う。
畑にいるとよくわかるが、この世は神秘に満ちている。目の前に開かれている豊かさに身を置くことを選ぶのであれば、しかめつらしく問題を論じている暇は(ほとんど)ないのだ。
この本で、野口さんが手塚治虫の「虫プロ」に就職し、「火の鳥」の初代担当編集者だったことを初めて知った。
“野口のタネのお店の壁にはなぜ手塚作品の絵が描かれているんだろう?”と不思議だった。
「生命はひとつ」という手塚漫画の根幹のテーマが「野口のタネ」にも息づいていた。


Be First to Comment